神経モデリング

大脳基底核の線条体では、ドーパミン投射を受け、報酬予測や意思決定をおこなっていると考えられている。分子・細胞・神経細胞ネットワークといった複数の階層で生命現象のリアリスティックモデリングを行うことで、報酬学習や意思決定の神経機構を探っている。

これまでの研究では、ドーパミンによる直接路中型有棘神経細胞の興奮性やシナプス結合強度変化の修飾を実現する細胞内シグナル伝達経路のモデル化を行った。生化学実験データを用いてシミュレーションを行うことによってドーパミンがリン酸化酵素や基質からなる細胞内分子ネットワークを活性化することを明らかにし、 報酬予測を実現する分子機構を予測した(Nakano et al., PLoS Computational Biology, 2010)。またドーパミンとアデノシンが大脳基底核の出力を制御している分子機構をモデルによって提案し、実験研究とともにドーパミンシグナルの分子機構の解明に取り組んだ(Zhang et al., Neurochemistry International, 2018)。

また、イオンチャネルや受容体を組み入れた直接路中型有棘神経細胞のマルチコンパートモデルを構築した。実験から取得した神経細胞の形態データおよび電気生理学実験データを用いて、細胞の各部位でのドーパミンの時間差入力に依存する電気生理学的振る舞いを予測した(Nakano et al., Frontiers in Computational Neuroscience, 2013)。

関連項目