ECG Vector
サポート
更新日: 2026年10月4日 · 対応: macOS 14以降/iOS・iPadOS 17以降
ECG Vectorは、心臓内の電気活動と各誘導に記録される波形の関係を学ぶための教育用シミュレータです。診断、治療判断、患者固有の波形予測には使用できません。
1. 基本操作
- 「心電図のしくみ」「イオンと心電図」「病態と心電図」「学習・クイズ」から、学びたい画面を選びます。Mac・iPadは上部のタブ、iPhoneは起動時の機能一覧から選択します。iPhoneでは左上の「機能一覧」で戻れます。
- 「心電図のしくみ」では、波形モデルから成人正常、右脚ブロック、小児正常、または学びたい典型波形を選びます。
- 12誘導一覧の波形カードを選ぶと、その誘導が3Dの誘導軸と拡大波形へ反映されます。
- 再生ボタンで開始し、速度メニューから0.05〜1.0倍を選びます。時間バーを動かすと再生が一時停止し、任意の時相を確認できます。
- 左右の10 msボタンで、停止したまま少しずつ進めたり戻したりできます。
- 3D内をドラッグして回転し、ピンチまたはスクロールで拡大・縮小します。「初期視点」で標準の向きに戻ります。
2. 3D表示の読み方
興奮と再分極
黄色の発光軌跡は脱分極(興奮)波面、ピンクの発光軌跡は心室再分極(電気的回復)波面の概略です。再分極は新しい興奮ではなく、T波の由来を示します。
微小双極子と心起電力
波面の両側には相対的な細胞外電位の「−」と「+」が生じます。局所的な矢印は−から+へ向かう微小双極子です。同方向の成分は加算され、反対方向は相殺され、残った橙色の矢印がその時刻の心起電力 M(t) になります。
誘導軸と投影
誘導軸 Lはマイナス極からプラス極へ向かいます。投影矢印は心起電力 M(t) の誘導軸方向の成分で、プラス極側なら波形は上向き、反対側なら下向きです。矢印の長さは単位方向への射影の大きさ、波形電位 V(t) = M(t) · L は誘導の感度も反映した値です。2誘導比較では、2つの誘導軸と投影を色で区別できます。
収縮
心房・心室の短縮と小さなねじれは機械的収縮です。収縮は電気的脱分極より少し遅れて起こりますが、それ自体を心電図電位へ別成分として加えてはいません。
3. 波形分解と2誘導比較
「心電図のしくみ」の上部で「1誘導」「2誘導」「12誘導」を切り替えます。「1誘導」では選択した誘導を拡大し、波形分解で起電力成分を選べます。「2誘導」では2つの誘導を選び、同じ時刻の波形と3Dの誘導軸・投影を見比べます。「12誘導」は同期した標準12誘導の一覧です。
波形分解では、破線が選択成分、実線が全成分を合計した波形です。心房興奮、中隔興奮、心室主興奮、遅延成分、再分極などを切り替えて、どの成分が波形を作るか確認できます。
山の数は興奮の回数ではありません。各時刻のベクトルが誘導軸へどの向き・どの強さで投影されたかの時間変化です。同じ電気活動でも、誘導軸が変わると1峰性、2峰性、陽性、陰性の違いが生じます。
4. 表示項目、断面、透明度
3Dパネル内の「表示」を開くと、断面/外観、心臓、内部構造、刺激伝導系、電気活動、機械的収縮、誘導計測、電極などを個別に表示・非表示できます。透明度も同じパネルで調整できます。
- 初期状態は断面で、内部構造と電極は非表示です。
- 凡例を選ぶと、対応する3D要素を強調できます。
- 方位コンパスの右・左・上・下・前・後は患者基準です。
- 正面の電極図は患者と向かい合った図なので、画面左が患者右、画面右が患者左です。
標準12誘導にはRA・LA・LL・RLとV1〜V6の10電極を使います。RLは中性電極で、標準誘導の電位差やWilson中心電極の計算には加えません。本アプリではRLを移動しても理想化した波形は変わらず、実機の雑音除去回路は再現していません。
5. イオンと心電図
「プリセットを選択」から代表例を選びます。たとえば「遅延Na電流増加」では、活動電位とQTが長くなるモデルの流れを確認できます。Proでは主要イオン電流と細胞外K⁺・イオン化Ca²⁺・Na⁺・H⁺(pH)を自由に調整し、1誘導/12誘導で基準と変更後を比較できます。iPhoneでも心電図を表示したまま操作できます。
「基準との違い」は全設定を合わせた数値の結果と、各項目を単独で変えたときの作用を分けて示します。複数の設定では作用が相殺することがあります。心電図の下にある「病気・病態とのつながり」で、低Ca²⁺や高K⁺などの代表例との関連を確認できます。高K⁺例にはP波平低化・PR延長も含みます。
「定量モデルの出力」は、Nernst式などによる細胞レベルの計算値と、全心臓の心電図への教育用推定を分けています。通常の臨床的Na⁺範囲では心電図への直接作用が小さく、波形がほとんど変わらない場合があります。pH単独の再分極作用は一定方向へ換算せず、未評価としています。
このモデルは患者固有の予測ではなく、表示する「モデル範囲」も生理学的正常範囲や信頼区間ではありません。計算の制限や教育目的の注意事項は、アプリの情報ボタンから「このアプリについて」で確認できます。
6. 病態と心電図
病態や参考例を選び、成人正常と「1誘導」または「12誘導」で比較します。波形上の特徴とその原因の説明を読み、同じ時間軸でどこが違うかを確認してください。12誘導では左列にI・II・III・aVR・aVL・aVF、右列にV1〜V6を並べています。
小児正常は5歳頃の代表例です。発熱例は洞性頻脈、高BMI体格は集団で見られる体格の傾向を示す参考例で、体温や体重だけから個人の心電図を予測するものではありません。病態例も実患者の診断基準ではありません。
7. 無料版とECG Vector Pro
無料版では、成人正常と右脚ブロック、標準12誘導、固定された標準電極位置、「病態と心電図」・クイズの体験、お気に入り、イオンと心電図の4つのガイド例を利用できます。
ECG Vector Proは買い切りの非消耗型購入です。イオン電流・細胞外イオン・pHの自由調整と同期12誘導表示、小児・その他の病態例、任意誘導、電極位置編集と誤配置、比較・クイズ全編を解放します。サブスクリプションではありません。
購入する
- 上部の王冠/「PRO」を選びます。
- Appleから価格が読み込まれるまで待ちます。
- 価格付き購入ボタンを選び、Appleの購入画面を完了します。
購入を復元する
購入時と同じApple AccountでサインインしたMac、iPhone、iPadからPro画面を開き、「購入を復元」を選びます。端末間の反映に少し時間がかかる場合があります。
8. よくある問題
購入ボタンがなく、「購入情報を再読み込み」と「購入を復元」だけが表示される
StoreKitが製品情報を取得できていない状態です。通信を確認し、App StoreへApple Accountでサインインしていること、アプリが最新であること、購入が利用可能な国・地域であることを確認してください。少し待ってから「購入情報を再読み込み」を選びます。TestFlight版の購入はAppleのテスト環境で処理されます。
購入済みなのにProが有効にならない
購入時と同じApple Accountを確認し、「購入を復元」を実行してください。その後アプリを終了して開き直します。購入完了が保留中の場合は、Apple側の承認後に反映されます。
3D表示が重い
「表示」から内部構造、電極、不要な補助表示を隠し、解説を閉じてください。ほかの負荷の高いアプリを終了し、ECG Vectorを開き直すことも有効です。
表示パネルの上側を選べない
アプリを最新バージョンへ更新してください。パネルは画面内に固定され、内容をスクロールできます。改善しない場合は端末の表示拡大設定と画面の向きを添えてお問い合わせください。
言語を変更したい
ECG Vectorは端末またはアプリごとの言語設定に従います。設定アプリの「ECG Vector」→「言語」から、対応する言語を選んでください。
9. お問い合わせ
問題を報告するときは、患者情報や個人情報を含めず、ECG Vectorのバージョンとビルド、端末とOS、選択した波形モデルと誘導、問題が起きるまでの操作、表示されたメッセージをお知らせください。